12月初旬。

肌寒いこの季節がまたやって来る。

相変わらず美咲とはそれほど話すことなく、刻々と意味のない時間がただ過ぎて行くばかりだった。

通帳もまだ持ったままで切り出そうにも切り出せないそんな自分にため息が出る。


どうにかするって言った割に何も出来てない自分が情けなくも感じた。

ただ、それを切り出すと言う事は美咲と離れると言う事で。

だからと言って、行かないでほしい。という選択もない。


よく分からないこの感情がどうしようもなかった。


「…楓っ、」


夜の店を後にし、大通りに向かう途中、俺を呼ぶ声に足を止める。

振り返ると、物凄く久々に見るミカの姿が目に映る。


「おー、お前久しぶりだな」

「私に会えなくて寂しかったでしょ?」

「それはねぇわ」

「はぁ?酷すぎるからっ!」


頬を膨らませて俺の腕を思いっきり叩くミカに苦笑いで腕を擦る。


「いてぇな」

「最近、早朝に楓いないなーって思ってね」

「で?」

「閉店後すぐに帰ってるーって情報が飛んできたから」

「へぇー…」


ほんと、どっから情報だよ。


「ねぇ、ちょっと何処か店に入らない?」

「あー…無理。俺、早く帰って寝たいから」

「ふーん…」


小さく呟くミカは寒さをしのぐため自分の身体を両腕で抱きかかえ、擦り始める。

冷たい風が頬を掠め、吐く息が白い。


「寒いから帰れよ」

「うん」


俺に視線を合わせたかと思うとすぐに逸らし、何故かミカはソワソワしていた。

いつもと様子が違うミカに俺はジッと見つめた。