「不機嫌満開かよ」


開店前の店に入ってすぐ、俺はソファーに背を付けて深く座る。

流星の笑った声とともに、俺はタバコを咥え火を点けた。


「別に」

「その顔はまたなんかあったのかよ」


また?

またって何だよ。と思い、笑いながら覗き込むようにして流星の顔が目の前に現れる。

その笑いが嘲笑っぽくて、俺は流星の顔に勢いよくタバコの煙を吹きかけた。

煙たそうに右手で軽く仰ぐ流星に俺はソッポ向く。


「嫌がらせかよ」

「さーな、」

「怖ぇー…そんな顔で接客すんなよ」

「お前以外にはしねぇよ」

「つか何でお前そんな機嫌わりーの?」


クスクス笑う流星に「悪くねぇよ」そう返し、タバコを灰皿に打ち付けた。

さっきまでのアイツとの事なんて言えるわけでもなく、ただ目の前で笑っている流星にため息を吐く事しか出来なかった。


「楓さん、おはよーっす」


不意に聞こえた、そのアキの声。

そのアキの顔を見た瞬間、思わず深いため息が漏れる。


「え、なんで俺の顔見た瞬間、ため息吐くんすか?」


アキは困惑した表情で俺と流星を互いに見る。


「つか、女かと思ったら原因お前かよ、」


流星は少し驚いた表情でアキを見た。


「はぁ!?俺じゃないですよ。ねぇ、楓さん…」

「さぁ…な、」

「さぁなって、なんすか?」

「いや、別に」


最後の煙を吐き出した俺はタバコの火を消し立ち上がる。

そのままバックヤードに入り冷蔵庫を開けた。


そこから取り出したウインターゼリーを口に含む。

いつもごとく朝から何も食ってなかった俺はとりあえず、ゼリーを腹に入れ込んだ。