「…ねぇ、キスしよっか?」
顔を離して口角を上げるリアにハッと我がに返る。
それに釣られてフッと鼻で俺は笑い、抱きしめる力を緩めた。
「こんな公の場所でしたくねぇんだけど」
「私は別に構わない」
「リアは特別。だから他の奴にみせたくねぇしな」
イルミネーションの元、その下で抱き合っている俺とリアに周りからの視線が向かう。
仕事だと割り切ってるつもり。
仕事だと、そう割り切ってしている事。
「じゃあ誰も居ない所で、する?」
顔を緩めるリアに小さく俺は笑った。
「そんなにしたい?」
「したい。別にセックスしようって言ってるんじゃないんだし。いいでしょ?キスくらい…」
リアが真剣に言って俺の頬に触れた時、タイミングよくスマホが鳴り響いた。
俺のじゃなく、リアのスマホが。
「出れば?」
一瞬躊躇ったリアが顔を顰めて、俺から離れる。
そしてリアは鞄の中からスマホを取り出した。
リアを見てるとたまに思う事がある。
追われるほうが楽だって事。
何もしなくても女から寄って来る楽さ。
その楽に俺は溺れたいって思う時もある。
でも、それは過去と同じでただ利用に過ぎないって事で。
俺の憂鬱勘を取り覗いてくれるただの繋ぎでしかない。
その繋ぎで今まで浸って来た俺は、
ただの最低な男だったんだろうと。
過去を探っても答えなんか見つかんないのに、
あの頃の俺に戻っても未来など見えないのに、
そう思う自分がきっと、
美咲との関係を複雑にしてるんだと、
そう、思った。



