「あなたがここに来て不思議な事を言ってきてから心配してたのよ」

「不思議な事?」

「ほら、夜の店やめようかって言ってたじゃない」

「あー…」


そう言えば、そんな事も言ってたな。

言った事すら忘れてたわ。


「それからね、なんか心配で」

「へぇー…そんな事、心配するほどでもねぇじゃん」

「心配よ。あの後、翔くんちに優香が行ったでしょ?」

「あぁ」

「溢れそうなタバコの吸い殻にお酒に部屋はメチャクチャって言ってたわよ。そりゃ心配するわよ」


思わず苦笑いになる俺に、沙世さんは小さくため息を吐き捨てた。


「ロクにご飯も食べてないんでしょ?」

「いや、食ってるけど」

「どうせコンビニでしょ?友達が心配するくらいだから相当だなって思って、今日は翔くん呼んだのよ」

「どーも」

「だからちゃんと食べて。栄養付けなきゃ」


目の前に置かれる料理は俺の事を思ってか、栄養バランスが揃っている。

こう言う瞬間を目のあたりにすると、本当に母親だって思ってしまう。


ほんと、お節介ながらにも俺はこの人に感謝している。

タバコの火を消してお茶を含み、俺は箸を掴んだ。


「いただきます」

「はーい」

「つか、この店の家具どうすんの?」

「あー…どうしようか悩んだんだけどさ、いい機会だから全部処分して新しいのにしようと思って」

「へぇー…」

「新しくなったら来てね。そん時は優香も来るし」

「あー…アイツ帰ったの?」

「翔くんの愚痴言って帰ったよ」

「はぁ?何で俺の愚痴なわけ?」

「また行くまた行くって、ほんと口だけの男だよ。って言ってたわよ」

「そんな事、今に始まった訳じゃねぇじゃん」

「ほんとそうなんだけどねー…結局は翔くんはあの子にとって大切な弟なのよ」

「へぇー…そりゃどーも」


クスリと笑った沙世さんは目の前に腰を下ろし、スマホを操作し始めた。