「諒也、また来るわ」


立ち上げる俺に「はいよ」とだけ諒也は返す。


「無理すんなよ」

「おぅ」


病室を出て切れた電話を一度ポケットに仕舞い、ロビーの所にある自動販売機で珈琲を買った。

そして車に向かい、タバコを咥えた俺は運転席に腰を下ろす。


もう一度取り出したスマホ。

珍しくなんだよ、と思いながら沙世さんに掛け直した。


「あ、翔くん?もしかして忙しかった?」

「俺は毎日忙しいけど」

「あら、そう。いい事じゃない」

「で、なに?」

「あのさー、さっき流星くん?に出会ったのよ」

「へぇー…」

「でね。翔くんが飯も食わずに落ち込んでるって言ってたからさ、ご飯食べに来なよ。今日、夜は休みでしょ?」

「つーか、勝手に俺の事話さねぇでくれる?」

「え?私が話したんじゃないから。流星くんが話しかけて来てくれたのよ、あなたがヤケ酒で体調悪いってね」

「はぁ?」

「だからおいでよ」

「おいでよって、沙世さん今から開店すんだろ」

「あー…お店ね、改装するのよ」

「え、まじ?」

「そうそう、だからねお休みするの。今日で見納めだよー、この店」

「あー…まじか。んじゃ今から行くわ」

「待ってるから」

「はいよ」


電話を切った後、タバコを消し珈琲を口に含む。

そして思わずため息を吐き捨ててしまった。

さっきの諒也の言葉が頭の中を駆け巡って仕方がない。


あぁ、そうだったって。

美咲の夢は留学で、それを実現するためには、どっちみち俺の傍から居なくなるって事。

それを話すって事は、美咲と離れるって事で。

あまり深くは考えていなかったけど、そう言う事って分かった今、俺にとっての良い選択なんて見つかるはずもなく。

結局は美咲を優先するしかないって、そう思った。