「まぁ、なんつーの?アイツ留学したいって言ってたのに、急に辞めだすって言ってきた」

「なんで?」

「そんな事、知んねぇけど。この前、美咲の母親から通帳預かって。まぁ美咲の為にお金貯めてたんだろうけど、その通帳もいらねぇって…」

「……」

「アイツ、どうなってんのか分かんねぇわ。別に俺がどうこう言える立場でもねぇし」

「……」

「あ、まぁ…アイツにイラっとしたのは確かでお互い喧嘩越しで、はい終わり。みたいな感じになったけど」

「……」

「俺じゃダメって事で」


そこまで言った諒也は一旦言葉を止める。

そして何故だか小さくため息を吐き捨てる諒也に、


「…で?」


俺は言葉を繋いだ。


「だから翔さんが話してやんねぇと聞かねぇわ、アイツ」

「俺が話した所で…って感じだけどな。俺の意見も聞かねぇよ、美咲は」

「俺よりは効果あると思うけど」

「さぁ…どうか分かんねぇけど」


正直、美咲と話した所で。って思う。

何に悩んで何を抱え込んでんのかも俺にも分かんねぇのに、話してところでアイツは俺に打ち明けるのか、なんて思う。


「あー…そだ。翔さん、金貸して」

「金?」

「ここに居っとさぁー…すげぇ退屈で、コンビニで雑誌とか買いてぇの。お袋に言おっかなーって思ったけど、金の時だけ呼ぶなって言われそうだしよ」

「俺が言うのもアレだけど、母親大事にしろよ」

「してるつもり」

「してねぇだろ。…つかお前、入院中だからこそ勉強しろよ」


苦笑い気味でそう言って、俺は財布の中から一万円を取り出す。


「は?ここに来てまで勉強って、ありえねぇわ」

「ここだからこそすんだよ。…はい」

「どーも。また返すわ」

「利子高いぞ」

「はぁ?翔さんから見て一万の利子ってどんだけだよ」

「うそうそ、返さなくていいから」


ハハッと笑うと同時にポケットに入れていたスマホが振るえ出す。

そっと手を伸ばし、画面を見ると″沙世さん″と表示されていた。