諒也と別れた後リビングに行き買ってきたものを置き、紙袋をソファーに置いた。

刻々と進んで行く時間。

その待ってはくれない時間の中、俺は未だ眠りについている美咲の隣に腰を下ろし、そっと頬に触れた。

助ける。って、そう言ったのに、どうしていいのか分からない自分に苛立つ。

俺から離れると言った美咲の事を無理やり引き止めたものの、結局なにひとつ解決もみつからず、俺の結果論が正しいのかも分かんなかった。

ただ、一緒に居たい。

これが俺にとっても、美咲にとっても正しい選択なのかも分かんなかった。

その頬に触れながら、「ごめんな」と小さく呟いた。


このままこうしてずっとここに居ればいいのだろうけど、何故か俺には出来なくて。

一緒に居たいと言ったものの、仕事を選ぶ事が正解かなんて分かんないけど。

これ以上のめり込んでしまうと、自分自身に歯止めが利かなくなりそうで、俺には出来なかった。

両立出来るほど俺は器用ではない。


作業着に着替えて現場に向かい、その瞬間、無駄に明るいタケルの声に思わずため息を吐きだす。

その輪の中に入って明るく振り舞うタケルの横を通り過ぎると、


「あーっ、俺の翔さんっ!遅いっすよ、」


なんて言葉と同時に周りの奴らの笑い声が広がる。


「お前、俺の翔さんって、できてんの?」

「そう。俺と翔さん、強い絆で出来てんの。ねー、翔さん?」


背後からのタケルの声に足を止めて振り返り、


「は?お前何言ってんの?」


思わずピークの眠さの所為で眉間に皺を寄せた。

眠すぎて、タケルのその無駄に明るい声で更に顔を顰める。


「お前の所為で翔さんめっちゃ怒ってんじゃん」

「わーっ、翔さんどうしたんすか?今日ご機嫌ナナメっすね」


ドンっ、と俺の肩に伸し掛かるタケルの腕。

その所為で余計に眉間に皺が寄った。