「なら別にいいけど…。でも、一人で抱え込むのはよくねぇよ。泣きたいなら泣けばいい」

「……」


泣きたいなら…

隠さず泣けばいい。

そして俺を頼って?


「何でもいいから話して。俺、みぃちゃんの味方だから」

「……」


俯く美咲の頭をゆっくり撫でる。

その行為に美咲は悲しそうな瞳で俺を見上げた。

そんな顔、すんなよ。

かち合った瞳に俺は口角を上げる。

だけど再び美咲はまた泣きそうな瞳で俺から視線を下げた。


「ってか、俺ではダメか…」

「あ、いや…」

「ま、俺もまだまだガキだしな」


ほんと自分でも思う。

ガキすぎて情けねぇよな。

そう思うと情けない笑みが零れる。

ここまで本気で好きになるとは思っていなかった。

あー…そか、これが本気なのかって思うくらい。


ただ周りに縋りついて来る女とは違う美咲にちょっとだけ遊び心で興味を持ちたかっただけなのに。

それがいつの間にか本気になってて、むしろ周りの女とは違う美咲に、どう接していいのかも分からない。


俺の男としてのプライドがズタズタにされた気分。


「私よりは随分大人だよ」

「さぁ、わかんねぇよ。みぃちゃんも結構大人びてるからな。俺はまだまだ大人になりきってねぇ子供」

「何それ…」


やっと笑みを漏らした美咲に俺の頬も緩む。

ただコイツの笑顔が見たくて、本当は弱いのに一生懸命に強がってるふりをしている美咲の心の中に少しでも俺が入れるのなら、俺は美咲を変えてやりたいと、そう思った。


だから。


「俺、みぃちゃんの傍にずっと居てぇから」

「……」

「だから会わねえとか言うなよ」


それが本当に俺から美咲に伝えたい言葉だった。

無意識だった。

本当は抱きしめる事もキスをする事も俺の中でセーブをかけていた。

のめり込んでしまうと仕事との両立なんて出来なくて、一歩距離を置こうとしてた。

だけど一緒にいるとそんな事も出来なくて、俺は美咲を抱きしめていた。

細い身体が俺の身体に埋まる。


少し震えて、押し殺す様に鼻を啜る美咲は俺に涙を見せる事などなかった。