「もしかして泣いてる?」
「…んな訳、ないじゃん」
強がってる美咲だけど、今にも零れそうな瞳。
むしろ既にその瞳からは涙が伝っただろうと言う証が頬にある。
我慢しきれなくなったのか、美咲は俯いたまま手で目元を隠した。
ギュッと抱きしめてやりたいと思った。
この華奢な身体で不安をいっぱい抱え込んで、その折れそうな身体を強く抱きしめてやりたいと思った。
だけど、それが出来なくて。
俺は俯く美咲の頭を何度も撫ぜた。
「ごめん。みぃちゃん…」
「意味わかんない。何で謝んの?」
「俺の所為」
「マジ意味分かんないっての」
「みぃちゃんの事、俺が苦しめてるから」
「だから違うって」
声を上げた美咲は顔を上げ、未だ潤んだ瞳で俺を見つめた。
だったら…
「…会わねぇとか言うなよ」
「……」
マジで。お願いだからそんな事、言うなよ。
美咲は言葉に迷ってんのか口を開く事はなく、視線を俺から避けて行く。
「とりあえず今日はここにいな」
そう言って美咲の頭を撫ぜ、俺はその場から離れた。
酒が身体に残っている限り、美咲を送る事も出来ず、だからと言って美咲を一人にさせたくはない。
クローゼットの中からスウェットを取り出し、それを持って美咲の傍まで行く。
「どした?」
未だ立ち尽くしてる美咲に声を掛けると美咲は慌てて顔を上げた。
「あ、いや…」
「はい、これ」
突っ立っている美咲の両手にスウェットを抱えさせる。
「え、何?」
「シャワーでも浴びれば?…少しは気分楽になんだろ」
「あ、いや、でも…」
戸惑う美咲に思わず笑みを零す。
そりゃそうなるわな。
ここに連れてこられて、帰んなって言って、泊まれって強制的に言ってんだから、戸惑うのも無理ない。
暫く考えたのか美咲は何も言わずに脱衣所に向かう。
バタンと閉まったドアに俺は一息吐き、ソファーに腰を下ろした。



