ここで寝る訳も行かず、俺は気怠い身体を起し部屋を出た。

タクシーを拾って、マンションまで着くとさっきよりも睡魔が襲い、風呂に入った後、俺はすぐに眠りについた。


どれくらい眠ったのか分かんねぇくらいだった。

トビの仕事がない事をいい事に俺はアラームを切っていた。


と、言うか。

誰からも連絡が入らないように電源までも落としていた。


自然に目が覚めて起きた頃には、もう15時を過ぎていて、スマホ片手に俺はリビングのソファーでまた横になった。

スマホの電源を入れ、掛かって来ていた電話の中から俺は美咲の名前を探していた。

ないと分かっていながらも探している自分に、またため息が出る。


そして俺は無意識に美咲にコールしていた。

当たり前だけど途切れる事はない着信音。

その着信音をプツリと切り、額に腕を置いて目を瞑った。


寝たら忘れる。って言葉はいったい誰が決めたんだと。

寝て忘れるくらいなら後悔すらもなくなると。


このままいっその事、美咲を忘れようかと思った。

なんでここまで美咲に逢着してんのかも訳わかんなくなってきて。

なんで美咲の事を気にしてんだって、思ってきた。


訳わかんない感情があるからこそ、苛々する。


なのにそう思っていても俺は、何故か美咲に電話をし続けていた。

そしてその電話に出たのは3週間が過ぎた頃だった。


「…はい」


出ないと思っていた電話に美咲の声が聞こえる。

むしろ逆に何で出た?と言う言葉が頭を過る。


「みいちゃん?」

「うん…」

「元気か?」

「うん。…ごめん」


ポツリと呟かれた声。

つか何のごめんだよ。

俺との約束を破った事か?

俺の電話に出なかった事か?

それか、男と寝た事?

金、稼いでいる事?


だけど俺は敢えて何も聞かなかった。

そんな話、聞きたくもねえから。