「ごめん」

「好きな人としかしないって事?」

「あぁ」

「なにそれ。翔らしくないね」

「俺らしくないって、なに?」

「昔は誰かれ構わず寝てたじゃん」

「もう、昔の俺じゃねぇから」

「なによ、それ。寝てくれないのなら翔の事忘れられないよ」

「酔った勢いで抱かれて何が嬉しいわけ?」

「好きだから何されても嬉しいよ?私は…」

「……」

「だって翔が好きだもん」


こう言ったらあぁ言う愛莉に立ちはだかる事も出来なく、俺は思わず深いため息を吐きだし、後ろを振り返った。

ベッドの上で足を崩して座る愛莉に視線を向け、


「どうやったら納得出来んの?抱くこと以外で」


そう言って愛莉を見つめた。


「それが一番肝心なのに…」

「それは無理」

「もういい。分かったよ。ここまで言ったら翔…落ちてくれるかなって思った。昔みたいに簡単に抱いてくれると思った」

「……」

「ほんと、変わったよね、翔。でも、もう諦めるわ。時間、掛かるけどね、」

「……」

「翔よりいい男みつけるわ。そんな男、なかなか居ないと思うけど」


服を着てベッドから降りた愛莉はため息交じりに口を開く。


「…ごめん、愛莉」

「って言うか、何で謝られてんの?意味わかんない…。謝るなら抱いてくれてもいいじゃない」

「…愛莉?」

「って、嘘だよ。これ以上言うと自分の事、嫌いになっちゃうからもう言わない。翔が選ぶ人は私じゃなかった。ただ、それだけ」

「……」

「じゃあね、バイバイ」


愛莉が部屋を出た後、俺は後ろにバタンと倒れ、天井を見上げた。

俺らしくない、か。

愛莉が言う様に昔は誰かれ構わずだった。

適当に遊んでりゃ気分も紛れるし、俺から行かなくても女はすぐに寄って来てた。


外見だけで寄って来る女をただ利用して、きっとあの頃の俺は一番最低だっただろう。

だからあの頃の自分にはもう戻りたくなくて、俺の中では消したい記憶。


それを思い出すたびに俺はお袋の死と重ね合わさなくちゃいけなくなるから、ただ忘れたいだけ。