酒をたらふく飲んで好都合だった。
酒がまだ酔い回ってる事をいい事に、俺はコイツを抱けるだろうと思った。
昔みたいに頻繁に抱き合ってた頃に戻るだけ。
何も悪い事なんてしていない。
客は絶対に抱かないと決めているけど、愛莉は客じゃない。
愛莉は昔のセフレにしかすぎない。
その女をただ抱くだけ。
「…なんで私じゃダメなの?好きなのに…」
部屋に入った瞬間、愛莉はそう言いながら俺を抱きしめ、自分から唇を交わしてきた。
何度も重ねて来る愛莉のキスを受け答えるかのように俺も交わす。
一度離れた唇。
愛莉は自ら服を脱ぎ、俺の首に腕を回し、再びキスをする。
そのままキスをしながら俺は愛莉をベッドに寝かし、首筋に唇を滑らせた。
「好きなの。翔が好き…」
「……」
女は俺に対して誰もがその言葉を言ってくる。
簡単に。
どうして俺がいいのかもわからず、俺の外見ばかり好んでる女は大概そう言う。
どうでもいい女から言われるのに、肝心な女からのその言葉などはない。
そう言ってほしいのは愛莉じゃなくて、ただ一人。
俺は美咲から聞きたいだけなのに…
「…翔。好きだよ?」
唇を交わし愛莉の胸に触れる。
酒の力じゃ出来ない事。
この酔ってる勢いで愛莉を抱き――…
「…ん、あぁっ、」
愛莉の微かに漏れた声に俺の意識が現実に引き戻される。
何やってんだよ、俺。
キスを落とす俺の唇。そして手までも止まる。
「…悪い。やっぱ出来ねぇわ」
小さく呟き、俺は身体を起して愛莉に背を向け、ため息を吐き捨てる。
「何で?」
「愛莉の事は好きじゃねぇから」
「そんなキッパリ言わないでよ」
寂しそうに呟かれた愛莉の小さな声がポツリと落ちる。



