「あれ?酒の力で忘れたいって、そっち?」


苦笑いで聞こえてきた流星の声に視線を向ける。


「は?なにが?」

「いや、俺の思ってた女と違うかったから」


ははっと笑う流星。

多分、そう…流星が思ってる女の方で合っていると思った。

流星の頭の中には美咲が過ったはず。


だけどある意味、愛莉の事もはやく終わらせたかった。


とりあえず店が終わるまで俺は酒を抑え、水でしのいだ。

未だに朦朧とする頭。

ぶっ倒れるまではいかないが、今からでもソファーにぶっ倒れて寝てしまいたいと思った。

だけど、そうにもいかなくて、俺は駅に向かった足を進めた。


また、駅かよ。と思いつつ、気怠い足を進めて行く。


もう終電を終えた駅は静まり返り、その周辺は人もあまりいない。

その駅の入り口の壁に背をつけて待っている愛莉を見た途端、ため息が漏れた。


「こんな時間にするほど俺に逢いたいって、なに?」


近くまで来た俺の声に顔を上げた愛莉は薄っすらと口角を上げた。

そして、俺の胸に飛び込むように愛莉は俺を抱きしめた。


「こんな時間って、翔が会える時間ないって言うからでしょ?」

「ま、そうだけど。…で?」

「ねぇ、ホテル行こ?」

「は?なんの為に?」

「私を抱くために」


その言葉で俺は嘲笑的に笑う。

ほんと変わんねぇな、コイツは。

未だ抱きつかれている愛莉の身体を引き離し、俺は愛莉を見下げた。


「てか、それに俺はなんの得がある訳?なんもねぇだろ、そんなの」

「あるよ。それで最後にしてあげる。それで私は翔を忘れる」

「へぇー…」

「じゃ、私と付き合ってくれる?翔が好き」

「それは出来ない」

「じゃ抱いてよ。約束する。それで翔の事本当に忘れるから」

「お前抱いたらほんとに諦めてくれんの?」

「うん、諦める」

「なら来いよ」


そう呟いてしまった俺は背を向けて歩き出す。


もぉ、めんどくさかった。

抱くだけで俺を忘れてくれるのなら好都合だった。

ここは迷わなくったってもホテルなら沢山ある。

ホテル街に入り、選ぶ事無く一番手前のホテルに俺は足を進めた。