あの時、美咲が俺に行かないで。と言ってキスをした日。

あのまま居れば、絶対に離せなくなってその勢いで抱いてしまうだろう。と思った俺は仕事を選び美咲から離れた。

今、思えば仕事に行かずに美咲と居れば良かったと思った。

その勢いで寝て繋ぎ止めておけば良かったって思う俺は自分にでも分かるくらい、情けねぇなって思ってしまった。


俺が引っ張っておかないと離れてしまう美咲をどうやって繋ぎ止めたらいいのかなんて全然分かんなくなっていた。


「楓さん、はよーっす」

「…はよ」


テンション高いアキの声を耳に俺は冷蔵庫からウインターゼリーを出し、ソファーに腰かける。


「ねぇ楓さん?」

「うん?」

「最近のルイさんの追い込み凄くないっすか?」

「追い込み?へぇー…」


正直ルイの追い込みなど、どうでもいい。

どうでもいいと言うか、俺の頭の中はここ最近そんな売り上げとか気にしてなかった。

美咲で。

俺もそこまで美咲の事を気にしてるのも、どうかと思うけど。それほど特に意識もしていなかった。


「へぇー…って。なんかアレっすよ?最近ルイさんよく客とホテル行ってますもん。だからよくボトル入ってるみたいで…」


そのアキの言葉に俺はウインターゼリーを口に含みながら笑った。

…嘲笑的に。


「最近っつーか、そんなのずっと前からだろ」

「え、そうなんすか?」

「そう。入った時からアイツはそんな感じ。寝たいっつー女とはほとんど寝てる」

「へぇー…やっぱ金のためなら寝れんのかなー…」

「さぁ、どうだろ」


金の為=美咲で繋がってしまう。

もし俺が美咲に金やるから寝て。と言ったら寝るのだろうか。

そんな馬鹿みたいなことを考えてる俺は相当心がやられている。


むしろ、そこまでして美咲と寝る意味も何もない。

ただ馬鹿で虚しいだけ。