「で、翔くんさ。相当疲れてるでしょ?」

「なんで?」

「顔に出てる」

「寝てねぇからな」

「寝れないくらい疲れる事してんの?」

「仕事な」

「仕事?仕事じゃないでしょー…そう言う疲れには見えないけど」

「そう?」

「そうだよ。ってか何か食べる?」

「いらね」

「アナタはいつもいらないばかりだね。お酒でお腹大きくしちゃダメって言ってるのに」


ボーッとして肘をつけタバコを咥える俺を見た沙世さんは小さなため息を吐きだし、顔を顰めた。

そして今度は目の前に水を置く。


「水じゃなくてビール飲みてぇんだけど」

「は?何言ってるの?あなたにお酒なんか出す訳ないでしょ?」

「……」

「今日は珈琲もださない。水しか出さないから。しかも常温ね」

「は?」

「相当弱ってるね、身体。病院行ってる?」

「行ってる」

「家ではアルコール飲んでない?それにタバコ…仕事以外やめたら?」

「またそれかよ、」


いつも沙世さんの口から出るのは同じ事。

その言葉に俺の口から深いため息が零れ落ちる。


「だって。私が言わないと誰が言ってくれるの?居ないでしょ、私しか」


その言葉に一瞬、美咲が頭を過った。

その言葉を言ってくれるのは美咲。

他の女は何一つ俺の身体など気にした事はないのに、なぜか美咲だけは俺の身体の事を気にしていた。


だけど、そんな美咲は今どこで何をしてるんだろうと…


「なぁ、沙世さん?」

「うん?」


肘をついて俯く俺は口に咥えていたタバコを離し、

「この仕事、やめよっかな」

小さく声を出すと同時にタバコの煙も吐き出した。


何でこんなことを言ったのかも分かんなかった。

しかも沙世さんの前で。


灰皿に打ち付けるタバコの灰が無残にも散らばって落ちていく。


「どうしたの?なんかあった?」

「向てねぇなって思って」

「向いてなかったらトップなんかになれないでしょ?」

「……」

「翔くんさ、今誰かの事を好きでしょ?」

「……」


灰が落ちているのにも係わらず打ち付けていたタバコを持つ指が不意に止まる。

そのまま沙世さんに一瞬だけ視線を送り、すぐに逸らした。

つか、そんな話、してくんなよ。