タバコの煙と同時にため息を吐き捨て、俺はスマホをテーブルに置く。

ふと視線を時計に向けると、18時50分。


「マジか、」


時間を気にしていなかった所為か、こんなにも刻々と進んでいる事に内心焦りつつも、身体は動かなかった。


普通に遅刻。

頭の中で流星が怒っているだろうと思いながらも、美咲が気になり動けなくなる。

もしかしたら、もうすぐ来るんじゃねぇの?

なんて思いながら未だに待っている俺は、相当、美咲に逢着してんだろうか。


何をそんなに血相をかいて、学校を飛び出したんだろうか。

誰と電話をしていたんだろうか。


気になって、何故か身体が動かない。

ソファーに座り込んで数分。


勢いよく鳴り響いたスマホに、俺は急いで掴んだものの、


「あぁ…」


画面を見た瞬間、素っ気ない声が漏れる。


「お前っ、」


出た瞬間、電話越しから大声で叫ぶ流星の声に、俺は思わずスマホを耳から遠ざける。


「ん?」

「ん?じゃねぇよ、何時だと思ってんだよ!!とっくに開店」

「あぁ、知ってる」

「何してんだよ、お前」

「何もしてねぇけど、急用」

「は?意味分かんねぇ事、言ってんじゃねぇよ」


流星の張り叫んだ声が、頭に響く。


「今から行く」

「今からじゃ遅ぇーんだよ!リアが来た」

「リアが?」

「そう。一番乗りに来た」

「マジか、」

「で、居ないって言ったら怒って帰った」


何故に今日という日に一番で来たんだと思ってしまった。

いつもなら終わりの方で来るのに今日に限って一番乗りとか…

必然的に漏れるため息が、流星にも聞こえていたらしく、


「俺もため息吐きてぇわ。リア怒ってたけど、朝方行くから店に居ろって言う伝言預かった」


淡々と話してきた流星の言葉に更にため息が漏れた。


「なんで朝方?」

「忙しいから朝しか来れないってさ」

「店閉まってんだけど」

「さぁな、説教じゃねぇの?つか早く来いよ」

「あぁ、今から行く」

「急いで来い」


プツリと切れた電話。

口から出てくるのはため息ばかりで、何故か身体さえも疲れていた。