「あっそ…。まぁお前が何しようと俺には関係ねぇけどな」


言った言葉に間違いはない。

こいつが何をしようと俺には関係ないことだ。


「じゃあ、私に係わらないで!」


張り上げた声とともにテーブルを叩きつける音。

その先に見えるのはクシャクシャになった一万円札。


そして美咲は顔を顰めたまま、勢いよく飛び出した。


その瞬間、はぁ…と思わず口から洩れてくるため息。

俺はいったい何してんだ。と言う呆れのため息。


頬杖をつきながらテーブルにあるその一万円札を摘まみ、透かすように札を見つめた。


男と寝た金だろうか…


頭の中を過るのは決していい事じゃない。

むしろそんな奴、世の中に沢山いる。

ま、俺には関係ねぇことだけど…


新たにタバコを取り出し口に咥えた時、ポケットから伝わる着信音に手が伸びる。


「はいよ、」

スマホを肩と耳の間に挟んで、タバコに火を点けた。


「楓、何処いんの?」

「飯食ってる」

「飯?」

「あぁ。つかまだ時間あんだろ?」

「余裕。どこ居んだよ」

「お前がよく来る居酒屋」

「あー…今から行くわ」


切れたスマホをポケットに仕舞うとともに、クシャクシャになった一万円札もポケットに突っ込んだ。


「あ、すみません」

「はい」

「それ下げてもらっていいですか?」

「はい。畏まりました」


近くに居た店員に美咲が使ってた皿を全て下げてもらい、タバコの煙を吐きながら暫くボンヤリしてると、


「始まる前からガッツリ飲むなよ」


笑みを漏らせながら流星が前に座った。