週明けの月曜日。
美咲から″来る″と言ったその日。
昼の仕事を早く終わらせ帰宅しシャワーを浴びる。
時刻は16時。
夜の仕事まで2時間程度しか会えないその時間。
なぜか俺には貴重な時間だった。
今か今かと来るのを待ち続ける一方、美咲は一向に現れない。
もしかして、忘れてんのか?
なんて思いながらも待った挙句、時刻は18時になろうとしていた。
「あいつ、何してんだよ、」
思わずため息交じりに呟いてしまった。
テーブルに置いていたスマホを掴み、美咲にコールする。
だけど何回鳴らしても電話に出る事もなく、再びため息が漏れた。
もしかして何かあったんだろうか。
美咲が自分から言ってきた約束を破るわけがない。
いや、むしろ美咲との約束なんか今までほぼないに等しい。
そして俺は再びスマホを掴み、耳に当てた。
「…はい」
すんなりと入ってきた諒也の声。
「あのさ、ちょっと聞きてぇんだけど」
「なに?」
「あいつ、美咲。今日学校来てたか?」
「え、美咲?」
「そう」
「あー…来てた。でも途中で帰った」
「は?帰ったっていつ?」
「昼休み…だったかな。なんかすんげぇ血相かいて帰ってった」
「なんで?」
「さぁ?なんかあったんかな、アイツ。葵に聞いても、急に帰って行ったって言うから分かんねぇの」
「あ、そう…」
「あー…でもあれ。なんか電話で話した後、急いで帰ってったみたい」
「急いでねぇ…」
その急いでと言うのは俺に会うために帰った。とかではないみたい。
現に今、美咲はここには居ないのだから。
そもそも俺とは電話などしていない。
「なんか急用っすか?」
「いや、電話もでねぇから」
「アイツの電話でねぇのは日常茶飯事だろ」
「まぁ…」
諒也のクスクス笑う声が電話越しから聞こえる。
だとしても今日来ると言った美咲が来ない挙句、電話に出ないのも不思議だ。
「また葵に聞いてみるわ」
「悪いな」
電話を切った後、一息吐き、タバコを一本咥える。
ジッポで火を点けた後、俺はもう一度、美咲に電話をする。
だけど、そのコールは途切れる事なく永遠に鳴り続けた。



