もっと美咲と話したい。
この一か月、何してたんだとか他愛ない会話をしたいと思いつつも時間は待ってはくれない。
小さくため息を吐き捨て、俺はクローゼットに向かい、そこからスーツを取り出す。
と、同時に俺の腕が素早く美咲に捕まれた。
…え?
咄嗟の事で、反射的に肩があがる。
思わず視線を腕に向けると、ギュっと掴む美咲の手がある。
そこから俺はゆっくりと美咲へと視線を向けた。
「どした?」
少しだけ俯く美咲に声を掛ける。
「…いで」
「ん?」
「行かないで…」
そう微かな美咲の声に一瞬だけ、俺は戸惑う。
初めて俺に向かって言った言葉。
行かないで。
確かに美咲はそう言った。
いつもそんな言葉言った事ねぇのに…
つか、どした?
そして俯く美咲は更に俺の腕をギュッと握りしめる。
「え、…みぃちゃん?」
だから更に戸惑ってしまった。
今日の美咲はいつもと違う。
いつも強がってる美咲じゃない。
そんな言葉を俺に吐き捨てると、俺も行きたくなくなるだろうが。
「もう、…もう辞めなよ。自分の身体の事、心配しなよ」
振るえた美咲の口から、出てくる言葉。
今にも目から涙が落ちそうなくらい潤んでいる瞳。
あぁ、そっか。
ようやく美咲がここに来た理由が分かった。
美咲は片づけをメインで来たわけじゃない。
それを言う為に来たんだと。
そんな俺の事を美咲に告げ込んだのは…
「諒也か…」
思い当たる名前を口にした。



