焼肉を食ったからって元気になる訳でもなく、疲れがなくなる事もない。

仕事が終わりマンションの前までタケルに送ってもらうと、気怠い足のまま扉の前で鍵穴に鍵を差し込む。

ガチャッと音を立てた扉を開け、足を踏み入れた瞬間、目の前に来た美咲に目を見開く。

そして俺の頬が緩んだ。


そう。さっきまでの疲れがなくなるかのように…


「みぃちゃん来てたんだ」


…会いたかった。

そう口にする事も出来ず、俺は美咲の頭をクシャリと撫ぜる。


「行くって言えば良かったね」

「だったら合鍵の意味なくね?」


頬を緩めた俺は、美咲の頭から手を離し脱衣所へと向かった。

合鍵渡してからこんなに来るのが遅いとは…

俺から来いって言ってねぇから来ないにしても、遅すぎ。

一か月も経ってんじゃねぇかよ。

ま、そんな奴か。

そんな事を思うと、思わず苦笑いが込み上げてきた。


「ねぇ!」


不意に聞こえた美咲の声にドアを開けようとしていた俺の手が必然的に止まる。


「どした?」

「片付ける所ない…」

「え?」

「だから片付ける所ないって言ってんの。これじゃあ借りたお金チャラになんないよ」

「あー…」


そんな事も言ったっけか。

忘れてた。

むしろ今日の朝まで散々散らばってたから片付けたばっかだし。


つか、あんな汚い部屋見られる方が今となっては嫌だと思ってしまった。


「まぁ、そういう日もある」


そう言って俺は脱衣所で汚れている作業着を脱ぎ捨てる。

チラッと後ろを振り返ると、未だ呆然と立ち尽くしている美咲に、鼻でフッと笑い、


「見すぎ…」


面白おかしく小さく呟いた。