美咲から視線を逸らし、俺はタバコを口に咥えて火を点けた。

視線を遠くに逸らしタバコの煙を一気に吐き捨てながら、


「…聞いてほしいのかよ」


思った通りの言葉を吐き捨てた。


「別に…。じゃあ、何で私を誘ったわけ?」

「うーん…強いて言えば俺と同じニオイがしたから?と言ったら納得?」

「は?意味分かんないんだけど。ほんっと馬鹿馬鹿しい」


ツンとした口調で吐き捨てた美咲はウーロン茶を口に含む。

まぁ、あながち間違ってはいない。

こんなに何で金に困ってるんだろうと。


あの頃の俺自身と重なり合って、複雑な気分になる。


空になったジョッキを片手に、通り過ぎていく店員に「同じの」と、だけ告げてジョッキを返す。


金が必要としても、こいつがやってる事は正しいとは思えなかった。

ま、でもそう言う奴はわんさかといる。

珍しいわけでもない。


だけど。


「馬鹿馬鹿しい事やってんのはお前だろうが」


思わず口に出すと、一瞬にして美咲は顔を顰める。

俺を睨んでくるその瞳を無視して、運ばれてきたビールを喉に流し込んだ。


「…ムカつく」

「あ?」


密かに聞こえて来た小さな声に、俺までも顔を顰める。


「ムカつくっつってんだよ」


吐き捨てられた言葉にいい気はしない。

吸っていたタバコを灰皿にすり潰し、俺はビールを勢いよく喉に流し込んだ。