「悪いけど俺、付き合う余裕とかねぇの。毎日忙しいから、そんな暇ねぇし」

「……」

「付き合ったとしても構ってやれない。会いたいと言っても忙しく逢えない。そんな感じで付き合っても意味ねぇだろ」

「それでも構わない」

「つかお前は俺の何処がいいわけ?俺、そんな対していい男じゃねぇし。俺よりいい男いっぱい他にもいんぞ」

「顔が好き」


タバコを咥えた瞬間、愛莉の言葉に鼻で笑う。

ほんと、こいつは変わんねぇや。

顔だけかよ、俺の存在って。

愛莉の場合、ただ横に俺を置いときたいだけだろ。

そんな便利で都合のいい俺じゃねぇよ。


「そこ重視すんなよ」

「顔もだけど翔の事、全部好き。ホストしてるーって聞いた時はさ、ショックだったな」

「…は?なんで?」

「色んな女が翔を取り合うでしょ?私だけ見てほしかったのに…」

「男いんのによく言うよな、お前」

「今は居ないから」

「居なかったら俺かよ。悪いけど、マジで俺は昔みたいに戻らねぇから」

「ふーん…」

「悪いな。仕事あっし、もう時間ねぇから行くわ」


短くなったタバコをすり潰し、残り少ないコーヒーを口に含む。

不満そうに俺を見つめる愛莉から視線を外し、テーブルに千円札を置き、その場を後にした。


出た瞬間、物凄いため息が口から出る。

こんなくだらない話の為に俺は時間を削ってここまで来たのかと思うと、余計に疲れが増す。

なんなら少しの時間だけでも仮眠をとりたかった。


とは言え、この時間を選んだのは俺だと言う事。

仕事を理由に早く帰れた事だけが救いだ。