「で、話って何?」


こんな時間にしたのは俺だけど、時間に切羽詰まってる訳で。

早く話を終わらせたいと思った。


「翔。今、彼女とかいるの?」

「いねぇけど…」

「じゃ、私と付き合わない?」

「はい?」


直球で言ってきた愛莉に思わず心の中で深くため息をついてしまった。

結局話はそれ。

まぁ、愛莉の事だからなんとなく予想はついていたけれど面と向かって言われると、正直心が重くなった。

まじ、勘弁して。


「私、まだ翔の事が好きなんだよね」

「……」

「今でも好き。忘れようって思ってたけど、好きって気持ちは今でも消えないんだよね」

「……」

「ねぇ、翔?もう一度、昔に戻ろうよ。付き合わなくてもいい。身体だけの関係でもいいから」

「……」


こいつはいったい何を言ってるんだと思った。

昔に戻る?

戻ってどうする?

その先は?

少しの沈黙後、運ばれて来たアイス珈琲を口にする。

これを聞くためにわざわざ来たかと思うと、余計に疲れが込み上げてくる。


「ねぇ。翔?」

「…悪いけど、お前とは付き合えないし、昔に戻る気もない」

「なんで?」

「何でって、そんな無意味な事しても意味ねぇじゃん」

「あの頃、あんなに寝たのに」

「…あの頃は何も考えてなかったからな。でも今は違う。真面目に生きてぇから」

「なにそれ。よく言うよ、昔は荒れてたくせに」


面白おかしくクスクス笑う愛莉は昔を思い出したかのように笑う。


「昔は昔。もう過去は振り返りたくねぇの」

「私は楽しかったよ。だから今でも思い出すの、翔の事。ねぇ、私の事好きになってよ」

「悪いけど、お前とは無理だから」

「誰か好きな人でもいるの?」


顔を顰めた愛莉から視線を逸らし、俺はなぜか紛らわす様にタバコを咥えた。

好きな人は居ない。

いねぇけど、何故か頭の中で美咲が過った。