優香が居る場所を避け、俺は外に出る。
タバコに火を点け、ため息とともに夜空に向かって煙を吐き出した。
この先の事なんか正直何も考えてなんかいない。
いつかは辞めようと思っていても、その後の事なんか何も考えていない。
だからと言って、トビの仕事をずっと続けるのか?と言われても、そうなのかも分かんない。
ただ、何も考えずに今を必死で生きているって感じ。
だから美咲は凄いと思った。
自分に夢がある。
やりたい事がある。
そんな美咲を俺は凄いと思った。
ただ単に今を生きている俺とは全然違くて、ある意味、美咲を誇りに思った。
「沙世さん、帰るわ」
タバコを吸い終わって中に入ると、沙世さんは食器を洗いながら俺に視線を送った。
「送ろうか?」
「いや、タクで帰る」
「そう。ねぇ、翔くん?」
「うん?」
沙世さんは出していた水道の水を止めて、タオルで手を拭く。
そして俺の傍まで来た沙世さんは少し微笑んで、俺の肩に手を置いた。
「翔くん、あまり無理しちゃダメよ。…あなたと百合香似てる。無理するところが」
「……」
「何かあったら言って」
「大丈夫。心配すんなって」
「そんな事言われても凄く心配だわ。母だもん」
その言葉に俺は鼻でフッと笑う。
「そーしとくわ」
「何よ、その言い方。あと、お酒とタバコは控えてね。病院行ってる?」
「行ってる」
「なんだかんだ言ってもさ、自分の体が一番大切だからね」
「はいはい」
「もう、その適当な返事やめて」
「んー…じゃ帰るわ。あ、そだ。優香にあげて。袋ねぇけど」
財布の中から取り出した5万円を沙世さんに差し出す。
「え、なに?」
「結婚祝」
「別にいいのに」
「アイツにも世話になってっから。ってのは言わなくていーから。はい」
沙世さんの手に握らした俺に沙世さんはクスリと笑った。
「なんだかんだ言って翔くん優しいね。百合香に似てるなー」
「あ、そう」
「照れてる?」
「照れねぇし」
「うん、でも、ありがとう。優香に渡すね」
「あぁ」
「また来てね」
「さぁ、分かんね」
「もぉ。またそう言う事言うでしょ?」
「はいはい、ご馳走様。またな」
ヒラヒラ手を振って俺は大通りまで行きタクシーを拾った。



