暫くして、箸を進めていた美咲の手が止まる。
そのまま手は下に落ち、そこから出て来たのはスマホ。
呆然と見つめている姿は、何か特別な事でもあったんだろうかと言う表情。
…男との待ち合わせか。
頭の中を過った、これまでのこいつの行動。
今思うと、何でこの女と居んだろうと思ってしまう。
連れて来たのは俺なのに。と思いながら馬鹿馬鹿しくなった。
…援助交際。
この辺では不思議じゃない光景。
別にこの女が何をしようが俺には関係ねぇけど、何故かこの女だけはしてほしくないと思うほど、俺の感情が苛立ちに変わった瞬間だった。
あー…、まじアホらし。
自分自身に苛立つ。
こんな女連れて、俺は何やってんだろうか。
「なに男?」
平然と言葉を吐き出すと、美咲はハッとした表情を浮かべ、すぐにスマホをポケットに入れる。
「いいの?男に返事返さなくても」
「男じゃないって」
苛立ったまま吐き出してきた美咲に、何故か笑みが零れた。
そんなムキになんなくてもいいじゃねぇかよ。
目の前の美咲は不満げに俺をジッと見つめてた。
「何?」
「本当は気になるんでしょ?何で私があの場所にいたのか…」
つか、こいつから言ってくるとはな。
それを聞いてくるっつーことは、俺が知ってるって言ってるようなもんだ。



