暫くしてコンコンと車の窓を叩く音に俺は視線を向けた。
笑みを向けて来る流星に車の窓を開ける。
「よぉ。お前、珍しいじゃん、車で来んの」
「あー…ちょっと」
「え?ちょっとって何だよ。しかも携帯に釘付け。なんかいい事でもあった?」
「何もねぇよ」
素っ気なくそう言ってスマホをポケットに仕舞い、車から降りる。
コイツに話せばロクな事がない。
最近では深く俺に突っ込んでくるから敢えて言いたくもない。
よりによって水族館だしな。
「最近お前、白着ねぇのな」
スーツの袖を流星は摘まんで引っ張る。
その流星の言葉で俺は思い出した。
「あー…ちょいお前に頼みがある」
後部座席のドアを開けた俺に、「面倒くせぇ頼みやめろよ」なんて本当に面倒くさい声が聞こえる。
「これ、クリーニング」
「はい?」
「だから持って行って。どうせお前、暇だろ?」
「は?暇じゃねぇし」
無理やり胸に押し付ける紙袋に、流星は顔を顰めながらもすんなりと受けとる。
なんならクローゼットの中にまだあるスーツも持ってくりゃ良かった。なんて思いながら流星に視線を送った。
「俺、忙しいんだよ」
「今から行けよ」
「じゃ頼む。今から行ってたら遅刻すっから」
「そう言う時だけ遅刻とか言ってんなよ」
チッと短く舌打ちをする流星に口角を上げ、ヒラヒラと手を振る。
俺に背を向けた流星を目に、俺は店まで足を進めた。
開店する前、俺はバックヤードに入りソファーに腰を下ろす。
そしてもう一度、スマホの画面を見つめた。
″人気水族館″
今まで打ってみた事のないフレーズを打ち込む。
次々と出てくるも、何処がいいのかさっぱり分からない。
″楽しめる水族館″
…って俺、何調べてんだよ。と思いながらため息を吐きだし、その文字を取り消し画面を暗くした。
ソファーに深く背をつけてタバコに火を点け、ボーッと天井を見上げる。
「水族館ねぇ…」
思わず呟いて、フッと頬を緩めた。



