「お前といる所、目撃したらしくって俺の隠し子かって。その電話」

「マジで?あはは。うけるわー…」

「全然うけねぇわ」

「でもあんたの場合マジでいそうだもんね」


そう言って意地悪そうにクスリと優香は笑みを漏らした。


「それだけはマジでねぇから」

「どーだかねぇ…。で、夜の仲間?」

「違う。トビの後輩」

「あー…って事はあれだね。あんた明日にはいっぱいそんな会話飛び交ってるのかもね」

「つか沙世さんと居る時は愛人とか言われっし、まじ勘弁してほしい」

「あはは。あーでもママと居ると見えるかもね」


そう言って面白そうに優香は声に出して笑った。


「そんな沙世さんにお前、すげぇ似てきてんぞ」

「そうなのよ。最近よく言われる。姉妹ですか?って」

「沙世さんぜってぇ40代には見えねぇわ」

「ママ結構モテるからねー…だからさパパが嫉妬してんの!ウケるでしょ?」

「まぁー…男目線でいくとそうなるわな。伯父さん元気?ぶっちゃけ離婚してると思ったわ」

「それママが言ってたわ。パパもさ何気にアンタの事心配してるし」

「まじか。俺のお袋の葬儀以来会ってねぇわ」

「あー…そっか。もうそんななるんだ」

「女を守れる男になれ。って言われたな」


懐かしそうに思い出し、記憶を辿る。

涙一つも出さない俺はただ茫然とその葬儀の光景を見ていた。

家族はたった俺一人なのに、その俺が何も手伝う事はなかった。

まるで他人事のように眺めて居ただけだった。


沙世さんと伯父さんと優香だけが家族のように動いていたのが今でも目に焼き付く。


そして葬儀の終わりに言われたっけ。

女を守れる男になれ。それこそが男だって。

人にやさしく。でもそれ以上に女の人を大切に扱えって。

あの当時は何言ってんだよ、この人。とか思っていたけど、今になって、お袋の事をそうしてれば違う未来だったのかも知んねって思う時がある。


「だってパパ。アンタの事、息子みたいに思ってたからね。俺の言葉でホストの道に進んだのかなって言ってたし。それは違うって言ったけど」

「ははっ、なんだよ、それ」

「ねー…あんた彼女とか作んないの?」

「なんも思わねぇなぁ…。むしろ作ったところで俺、構う暇もねぇもん」


そう言ったものの、何故か頭に美咲が過った。

だけど、違う。

助けるとは言ったものの、恋愛感情などない。

それに相手は高校生だし。

高校生を好きになる選択なんて、俺には全くない。