「つーか、お前。名前なに?」

「はい?」


不意に呟いた俺の言葉に女の眉間が寄る。

別に知りたかった訳でもない。

ただ、なんとなく。


「だから名前」

「…美咲」


あまりに簡単に教えてきた所為か、思わず俺は唖然とし言葉を失った。

まさか、こんな簡単に名前を言うなんて思ってなかった。

だからと言って、教えてくれんだ。とまでも言わなかった。言ったら言ったで、また逆上しそうだからな。


「美咲ね…」

「何よ。私の名前をどうする気?」

「はぁ?なんもしねぇわ。…俺は、翔」

「あっそ、別にアンタの名前なんか聞いてないし、どうでもいいよ」

「なんだお前。マジ可愛くねぇよな」

「てか、そんな可愛くねぇ奴に声掛けたのは何処の誰だよ!」


ごもっともと言った言葉を吐き出したこの美咲に俺は思わず笑みが漏れ、新しいタバコをもう一本咥えた。

そして次々と運ばれてくる料理に躊躇してたものの、美咲は少しづつ口に運んでく。


つか、腹減ってんじゃん。

まぁ、ご飯にふりかけじゃーな…

けど、昔の俺もこんな感じだったけど。


絶対に戻りたくもねぇ昔…

こいつとシンクロナイズすんのも情けねぇ話だ。


「なぁ、お前って何歳?」

「18」

「18って高3?」

「そうだけど。アンタは?」

「23」

「へぇー…23のおっさんが高校生みたいなガキ誘って楽しい?」

「おっさんって?そんな事初めて言われたわ。まー、お前みたいな変な奴は案外おもしろいと思うけど」


思った通りの言葉を吐き出して少し笑みを見せると、案の定、美咲は顔を顰めて俺を睨んだ。