確かに、流星が言った通り素直な感想だったかも知れない。

求めるもの支えるのがあれば、辞める。

頭の片隅に美咲が浮かんで、美咲に対する言葉だとしても、辞めるのは今じゃない。

いや、むしろアイツに対する言葉なんだろうか。


何故もこんなにも美咲を気にしているのか正直、俺にも分からない。

でも、ただ思うのは、アイツは俺の事を干渉しないと言う事。

他の女とは違う、俺を追っかけたりしない。

遠回しに避けるような言葉を言わなくてもいい。

それが俺にとって楽だと言う事。

その楽さに俺は少しずつ惹かれていってるんだと言う事。


ドロドロとした恋愛は好きじゃなくて、干渉されるのも都合のいいように俺を扱って来る女は昔から好きじゃない。

都合のいい時に扱われるのはうんざりで、彼氏が相手してくれないからと言う、便利な俺でもない。

好きだ、好きだと言い寄って来る女は大概、みんな自分の事しか考えてなくて、自分のいいようにしか動かない。

そんな、くすんだ世界から見る景色は押し潰されそうなくらい濁っていた。


「…帰るわ」


一度、横たわった身体をすぐに起こし、通りかかった流星に声を掛ける。

その瞬間、流星のフッと鼻で笑う馬鹿にしたような声が耳を掠めた。


「悩み事。俺に相談しろよ。解決出来る案はいくらでもある」


未だにクスクス笑う流星に、「お疲れ」その言葉に返答するわけでもなくそう言って、店を出た。

出た瞬間、夜空に向かって、一息吐く。

雨が上がり、星一つない真っ暗な夜空に、更にため息が漏れる。

そして足を進め、大通りに向かう。

だけど、その足は引き返し、もう一度店の前を通り過ぎた。