駅前の大通りで待つ事10分。
よりによって雨。
透明な傘にバチバチとあたる雨粒がため息を吐きだす。
雨が好きだと言う奴がいるけれど、俺はそんな雨が憂鬱で仕方がなかった。
無駄に昔を思い出す。
雨が降ると何もする目的がない女が暇だと言って俺をよく誘ってきていた。
男が居るのにも関わらずベッドの上で好きだと言う女。
そんな事をしている俺も俺なんだろうけど、あの頃は俺にとっても楽で好都合だった。
だから雨は好きじゃない。
お袋が亡くなったのも雨の日だった。
まるでお袋が泣いているように降りしきる雨の中、参列者が声を出しながら泣き叫んでいる光景。
棺桶が霊柩車に運ばれた後、沙世さんが泣き崩れて叫んでいた光景。
雨が過去を思い出させる。
気持ちを切り替えるようにフッと息を吐き捨てると同時に目の前に高級車が停まると、その中からリアが姿を現し俺は傘を差しだした。
「足元気をつけろよ」
雨脚の悪い中、リアのピンヒールが音をたてる。
相変わらず人気は目立つそのオーラが周りの視線を買う。
「大丈夫」
口角を上げたリアは俺の腕に自分の腕を絡める。
繁華街に入り、雨だからと言って人が減る訳でもなく、賑わいをもたらす。
傘に弾ける雨音とともに頭を過るのは何故かミカの言葉で。
それが特に気になった訳でもないけど、
「店に入る前にリアに聞きたい事がある」
気付けばそんな事を俺は言っていた。
リアが誰と居ようが俺には関係ない。
だけど、俺の中でルイだったことが何故か気に食わなかった。
「なに?」
あともう少しで店って所の手前。
濡れないようにとビルの奥にある階段へと身を寄せる。
リアは気を悪くしたのか不機嫌そうに俺を見た。



