「今、店じゃねぇからな」

「あーあー…つまんない」

「じゃ俺なんか待ってんなよ」

「ほんっと、また今日も冷たいわ。久々に会ったのにさ」

「今度、奢ってやるから。前に奢ってもらった分な」


〝じゃーな″

付け加える様にして背を向け、手をヒラヒラさせ足を進める。


「あ、そうだ。ルイって人さ、女と居るの見掛けたよ?」

「俺、関係ねぇし」

「リアって人でも?」


何故かその名前で足が止まって思わず振り返る。

ルイとリアが?

なんで?


「あ、やっぱり気になるんだ」


振り返ってミカを見つめる俺に、ミカはフッと頬を緩ませた。

気になると言えば気になる。

それは何でルイと居るんだろうって事で好きだからじゃない。


「ってか何でお前がリアの事知ってんの?」


むしろそっちの方が疑問かもしれねぇ。

全然、お前とリアの接点なんかないはず。


「美人な社長令嬢でしょ?まさに高嶺の花。なんか漫画に出てきそうな人だよねー」

「……」

「ねぇ知ってる?常に男が居るんだって。でもまぁ、あそこまで色気あるオーラ出されちゃそうだよね」

「……」

「ほんっと高嶺の花だよね。凄いよね、楓にゾッコンじゃん。だからほかの男とは付き合わないんだってさ」

「……」

「この業界であの人の事、知らない人っていないでしょ」

「……」

「ねぇ、楓の好きな人って、その人でしょ?」

「は?俺がいつ好きな奴いるっつった?」

「だってこの前会った時、なんか意味深ぽい事、言ってたでしょ?」

「そんな事、言ったっけ?つか、それ違うから」

「へぇー…そうなんだ。ま、楓に会いたかったのはただその情報教えてあげようと思っただけなの」


そんな情報いらねぇわ。と思いながらミカと別れた後、俺はタクシーを拾って家まで帰った。

そしてリアと出会ったのはその日から4日後だった。