「お前のほうが早いし。てか何でそんな気だるそうにしてんだよ」

「ちょ、聞いてください」


アキはため息を吐きながら椅子に深く座り、うな垂れる様にソファーに寄り掛かった。


「なに?」

「俺、昨日久々に元カノに会ったんすよ」

「へぇー…」

「ま、未練ダラダラで別れたんすけど」

「未練ダラダラって、すげぇな。じゃ別れんなよ」

「いや、それが俺がホストになるって言う理由で別れたんすよ」

「へぇー…」

「アイツがホストは嫌いっつーから」

「あぁ…なるほど」

「で、昨日たまたま会って、直球勝負でやり直したいっつったら、速攻無理って言われた」

「あー…マジか」


思わず声に出して笑ってしまった。

残りのウインターゼリーを全部飲み干し、同じようにアキの隣の椅子に腰を下ろす。

笑いながら手に持っていた錠剤を口に含み、一気に水で流し込んだ。


「つか笑い事じゃねーっすから。まじで、」

「で、無理な理由がホストだから?」

「そう。女に媚び売ってるような人とは付き合えないって」

「媚ねぇ…ま、そうかも知んねぇけど」


呟くようにそう言って俺はタバコに火を点けた。


「でも楽しいから辞められないっすよね」

「じゃ、いいじゃねぇかよ。楽しいって思うのなら辞めなくてよくね?」


って思うと、俺は何のためにホストを続けてるんだろうと思う。

金の為?好きだから?楽しいから?

どれも違うような気がした。

確かに初めは金のためだった。

だけど今は違う。


そう考えて最終的にたどり着くのは、やっぱり俺の心に空いた隙間に誰かを入れたいだけの繋ぎだった。


「けどあれっすよね、ぜってぇこの職業って特定な女出来ないっすよ」

「特定ねぇ…」


そうなのだろうか。

まぁアキが言う事は正しいんだろうけど。

いや、そもそもそれが正しいのだろうか。

それすら分からない。