「とりあえず、生と…お前は?」
席について速攻、俺は飲み物を注文をする。
女に視線を向けると、頑なに唇を結び戸惑ったように首を素早く振った。
「んじゃあ、ウーロン茶で…」
「はい。畏まりました」
店員が姿を消すと、俺はポケットからタバコを取り出し口に咥える。
火を点けた後、端にあったメニューを取り、真ん中に置いた。
「何、食う?」
タバコの煙を吐き出しながら、視線をメニューに落とす。
暫く見ていた視線を女に切り替えると、女の視線はメニューじゃなく俺を見てた。
だけど視点は合ってない。
俺のような俺じゃない、どこだか訳分かんねぇ視点。
なんだ、こいつ。
「おーい、聞いてる?」
覗き込むようにそう言った俺に、女は意識がハッキリしたのか、慌てて視線を逸らす。
「いらない」
「は?何で?」
「余計な金使う」
「馬鹿か、お前は」
思わず笑いながらそう言った俺に、女は一瞬にして眉を寄せる。
「俺の奢りに決まってんだろ」
誰がこんな高校生の女に飯を奢ってもらわなきゃいけねぇんだよ。
そこまで飢えてねぇし。
なのに俺の押し付けたメニューをあっさりと押し返し、
「やっぱいい」
頑固に、首を振った。
「は?お前、食ったのかよ」
「ううん」
「じゃあ、食えよ。つーか、いつも食ってんのか?」
「うん。ご飯にふりかけ、とか」
「マジで言ってんの?」
「……」
思わず笑いとともにむせ返ったタバコの煙が辺りを白くさせる。
ご飯にふりかけって。
やっぱ、こいつおもしれーわ。



