再び視線を女に移すと、あまりにも至近距離になった所為で女が少し後ずさりしたのが分かる。

その綺麗に整った顔が俺の目の前に移り込んだ。


アキが言ったように嫌いじゃねぇ顔かもしんねぇ。

透き通った白い肌に綺麗な瞳。

丁寧にメイクされた顔が目の前にある。

女は飽きるくらい見てきたけど、俺の心を乱すような女は居なかった。


だからと言って、この女にそうしてほしいなんて思ってもない。

こんな高校生の女に俺が揺らぐわけねぇだろ。


「じゃ、このまま行こっか。ってか、もう着いたんだけど」


女の腕を離し、目についた居酒屋のビルを見上げて指差す。

その俺と同じように女は視線を上げ、何を考えてんのか分かんねぇけど、暫く女は見上げたままだった。

その所為か、掴んだ胸倉さえも忘れたんだろうか。

力が入った掴むシャツ。お陰で首筋が痛い。


「お前、いつまで引っ張ってんだよ」


一向に離さない俺の胸倉を見つめたまま、眉を寄せる。

その言葉にハッとした女は俺の胸倉を離し、少し後退った。


クシャクシャになったシャツを、俺はため息を吐き捨てながら軽く整える。


「とりあえず飯食おうぜ」


空腹が限界だった。

朝から何も食ってねぇから、とりあえず飯が食いたい。

店で酒飲むのもいいけど、空腹に酒をつぎ込むと身体がもたねぇ気がした。


「…は?なんでよ」

「腹減ったからに決まってんだろ」


唖然とした表情の女に口角を上げる。

足を進めていく俺の背後から着いて来る女の足音。


つか、あれだけ嫌がってたのに来てんじゃねぇかよ。

そう思うと余計に笑みが零れ落ちてた。