「…楓さんっ、」


画面を見つめていると、同じように隣に彩斗が腰を下ろす。


「どした?」

「流星さんが、あんま長居すんなよって。楓さん抜けたら戻ってくんの遅いからって。客が怒るってさ」

「うーん…、今日はちょっと遅くなる」

「誰か連れてくんすか?」

「予定なし」

「つか、挑発されてたんすか?」


苦笑いで同じくタバコの火を点ける彩斗に俺は空を見上げて煙を吐く。


「挑発?まー…そんなとこ」

「楓さんがムキになんの珍しいっすね」

「…かな」

「つか頑張って下さいっすよ」

「どーせお前も賭けとやらに入ってんだろ?」

「あ、分かります?」

「もうなんとなくメンバー分かるわ」

「流石っすね」

「いやいや、お前も頑張れ」

「楓さんのヘルプに?」

「ちげぇよ。個人的に」

「あー…そっちね。てか言わせてもらっていいっすか?」


彩斗はさっきまでとは違う真剣さを取り戻し、俺を身構える。


「何?」

「営業電話、何でしないんすか?」

「あー…まぁ、それは俺の悩みの種でもある」

「なんすかそれ?」

「今まで、本当にしてねぇから急にしたら情けねぇだろ」


ただの情けなさ。

厳しい時すら、ボトルを入れてとすら頼んだ事すらない。

それをトップになってから。いや、もしくはホスト業界に入ってからの俺の唯一の守りごとみたいなもんだった。

と言うか、別に好きでホストをやった訳でもなく、やりたいからホストをした訳でもない。

だから、今更…


「え、そう言うもんすか?ぶっちゃけ、した事あります?トップを貫いてから」

「んー…5本の指に入るくらい」

「そんだけっすか?ある意味凄いっすね。じゃあ今日はもう10本にしましょう」

「お前が決めんなよ」


笑いながら彩斗の額を指で弾くと、彩斗は笑いながら、


「もうすぐで今日終わりっすよ。俺、金ねぇから楓さんに勝ってもらわないと」

「それで稼ぐな」


人ごとみたいに言う彩斗に、俺は口を開き彩斗に向かってシッシッと手を振る。