―――――…

気が重く遠のくと感じてしまった月末。


「楓さん、おはよっす」


バックヤードでタバコを咥えながら売上表に目を通してる俺に、アキが元気よく声を掛ける。

その明るさとは反対に俺は小さく呟いた。


「…はよ」

「えー、元気ないっすね」

「今、充電中」

「充電中っすか?」


声を上げて笑うアキは、「え?追い越したんじゃねぇんすか?」続けられた言葉と同時に売上表を覗き込んだ。


「まー…80だけ」

「おぉ、この短期間で凄いっす。余裕っすね」

「どう見ても余裕じゃねぇだろ」


そう言ってタバコの煙と同時にため息を吐き捨てた。

今日で終わりっつーのに余裕な訳がない。

80なんて、あっちゅう間に越されんだから。


「楓さん、絶対に1番とって下さい。俺、楓さんが1番に5万賭けてるんで」

「は?」

「そう言う事なんすよー…」

「お前、何そんな事してんだよ、」


売上表から視線を外し、アキに眉を寄せる。

視線がカチ合った瞬間、アキは口角を緩ませた。


「なんか成り行きでそんな話になってもた」

「つかそれ、俺が得する事なんもねぇし」

「いや、おめでとうって」

「は?意味分かんねぇわ。どーせルイとだろ?」

「おぉ。よく分かったっすね」

「分かるっつーの。で、そんな馬鹿な賭けをする奴は何人?」

「えー…」


アキは両手を広げ、数を数えながら指を折る。

別に普段なら気にならねぇ事。


なのに真剣に指を折っていくアキの手の平をジッと見つめてしまった。