「あー…で、あの人、俺の母親って事になってんだわ」
「は?何が?」
「周り、…から?」
首を傾げる様に呟くと流星は背を車体から離し、俺の方向へと向く。
「は?よく分かんねぇんだけど」
「まぁ、なんか言われたら話合わせといて。答えんのも面倒だし」
窓の外に腕を伸ばし、タバコの灰を落とす。
「はいはい」
流星のどうでもいいため息交じりの声を聞きながらタバコを咥えた後、煙を吐き出しながらタバコをもみ消した。
「帰るわ。眠てぇから」
「今から寝る気?」
「あぁ」
「余裕で間に合わねぇじゃん」
車のデジタル時計に視線を向けると、16時45分の文字。
帰って1時間は寝れるだろうか。
「ギリギリってとこ」
「お前のギリギリは余裕で過ぎってっからな」
「まぁ、頑張るわ。じゃあな」
帰りながら、ふと沙世さんの事を思い出した。
″…百合香、待ってる。翔くんに会いたがってるよ。ちゃんと会いに行ってあげて″
沈んだ声で悲しそうに言っていた沙世さんの言葉が頭から離れず、暫く行ってなかった墓に向かったのはそれから数日後。
トビの仕事が休みだった午前中に足を運ばせた。



