「翔くん、着いたよ」


軽く肩を揺すられる揺れで目を開けた俺は、眠りに入ってた事に気付く。


「ありがとう」

「いいえ。翔くん、引っ越さないの?店から歩いて帰れる所の方がいいのに」


沙世さんはフロントガラスからマンションを見上げた。


「住んでる所、バレんの嫌だし」

「あー、なるほどね」

「誰にも邪魔されたくねぇの」

「そっか。あなたらしいわ」


フッと笑った沙世さんは「また店に来てね」ドアを開ける俺に言葉を続ける。


「はいよ。…気をつけて」

「うん。おやすみ」


軽く手を振った沙世さんに、俺も手を上げる。過ぎ去って行く沙世さんのテールランプを見つめながら一息吐きマンションの中へと入る。

入ってすぐリビングに向かわずに風呂場に直行し、シャワーを頭上から浴びた。


眠さを惜しんだまま働いた所為か、瞼が重い。

そして沙世さんの言葉がやけに頭に重くのしかかった。


シャワーを浴び終えた俺は、スマホのアラームを7時に設定し、そのままベッドに倒れ込んだ。