「つか沙世さん。俺の事、凄げぇハードル上げんの止めてくんね?」
思わず、さっきまでの疲れで深いため息が漏れる。
「え、何で?」
「何でって、沙世さんの知り合い相手に出来ないっす。しかも息子じゃねぇし」
「アンタだって、さっき言ったでしょ!しかも余計なことまで言っちゃってさ」
「別に言った覚えもねぇし」
「ま、でもさ。こういう時に翔くん売っとかないと、ダメでしょ?」
「は?」
「今落ちてんでしょ?丁度いいじゃん。売れる時には売っとかないと。あの子たちが情報出したら、色んな人が来るわよ」
「沙世さんって、怖いっすね…」
「そう?」
なんて笑みを漏らしながら沙世さんは首を傾げた。
「まぁ昔っからそんな感じっすもんね」
「翔くんも変わってないけど。常に女の子が居る所は」
「そっちかよ、」
「なのに特定の子が居ないのがビックリだよ」
「うっせーな、ほっとけよ」
吐き捨てた言葉に沙世さんはまたクスクス笑う。
少し歩いて、沙世さんが停めている駐車場に着くと、そこにはいかにも周りと浮いている車が目に飛び込んだ。
真っ赤な、ベンツの高級車。
相変わらず、凄げぇな…
「沙世さん、また車かえたんすか?」
「えー…かえてないわよ。もう1年ちょっと経つけど」
「へぇー…初めて見る」
「だって一年くらい翔くんと会ってないもん」
「まぁ、そうっすけど。かっこいいっすね」
俺は、車体全身を見てから助手席に乗る。
つってもベンツだからいつもの運転席と同じ席。だから変な違和感が残った。



