次の日の夜、俺はいつも以上にやる気がおきなかった。

そんな事は何でか自分にでも分からない。


ただ来たものの、いつもの様に店の壁に背を付けて、ボンヤリと通り過ぎる人達を目で追ってた。

これから夜になろうとする街は人で溢れかえり、今日一日をここで終わらせようとする人達。

その人波が息をするにもむさ苦しいほど、押し潰されそうだった。


「…あの女」


暫くして目に付いたのは、まさしくあの制服を着た女だった。

相変わらず綺麗な顔してんのに、今から何処行くんだよ。と思う訳の分からない俺の感情がいたたまれなくなったのは言うまでもない。

一人で歩くその姿は、まさに今から誰かと出会おうと言う気、満々としか思えなかった。

いや、むしろもう出会った後か?

だけどその歩く姿がほんとうにつまらなさそうで。

この世間に興味ないですって言ってるような表情。

あー…また男かよ、

そんな言葉が脳裏を過り。


そしてその感情が――――…


「…ねぇ、ちょっとアンタ」


止められなかった自分自身に正直驚いた。

そう声を掛けたものの、女は無表情で何も聞こえていなかったかのように足を進める。


…当たり前、か。


「待てよ、聞こえなかった?」


女に覗き込むように俺はもう一度話しかけ、視線を合わせる。

一瞬、かち合ったその瞳が″何だよ、この男″とでも言いたそうで。

そのまま視線を逸らされたかと思うと、再び無言で俺に背を向けた。


あー…、マジか。

情けねぇけど、俺のプライドが許せなかった。

この俺にこんな態度とった女は初めてだったから。


だからムカつく反面、遊びでいいから落としたいと――…