「はぁ?翔さん、どー言う意味っすか?俺にも悩みくらいありますって」

「どうせ女が居ないっつー悩みだろ」

「あ、分かります?」

「やっぱ、女一色じゃねぇかよ」

「ま、時と場合によっては…」


言ってることがよくわかんねぇタケルに思わず呆れたため息を吐き捨てた。


「お前はいいよなー、呑気そうで。羨ましいわ」

「つか翔さん、悩みあるんすか?全然なさそうなんすけど。むしろ毎日幸せそうじゃないっすか?」

「は?どこがだよ、」

「ほら、こー…なんつーのかな。産まれてきて良かったぜ!みたいな…女は常に寄って来るし?みたいな」

「つかお前の頭は女しかいねぇのかよ」


呆れ声で言った俺にタケルは笑い声を上げた。


「まぁ80パーくらい」

「それ高けぇだろ」

「あー…俺も翔さんになりたいっす。生まれ変わったら翔さんに」

「アホか、」


軽く笑いながら俺は一旦、動かしてた手を止め、その場を離れる。

近くの自動販売機で缶コーヒーを取り出し、石段に腰を下ろした。


生まれ変わったら俺に…か。

何度か聞いた台詞だった。


いつからか他人は俺を羨ましがるような存在で見る。


それが馬鹿馬鹿しく思えたのは今だけじゃない。

俺の何を知る。

だからと言って決して人に苦労話なんて持ちかけた事も語った事も一度もない。


言ったからって何もないのが当たり前の事。

同情なんてまっぴらごめんだ。