リアが帰ると言った頃には、もう閉店まじかだった。

外に出て、その真っ暗闇の空気に深く深呼吸する。


店から少し歩いた所にある大通りに差し掛かった時、隣のリアが、ふと足を止めた。


「電話まってる」

「……」


同じく足を止めると、リアは俺の首に両手を回しゆっくりと見上げた。


「楓も分かってるでしょ?あれで勝ててないって事」

「……」

「分かってるからスーツ黒…なんでしょ?」

「特に意味はない」

「楓に黒は似合わない」

「……」


そう言ってリアは薄っすらと口角を上げた。

確かに…確かに勝ててないと自覚する。


大量に飲んだけど、きっとまだ追いついてないだろう。

ちょっとは縮まったものの、あと一週間と言う日数で勝てるか分かんない。


「楓はさ、ホントに電話しないよね」

「してほしいの?」

「当たり前でしょ?でも、そう言うガツガツしてない所が好きなの」

「……」

「楓がNO1じゃなきゃ嫌だから、電話なしでも来るけどさ」

「……」

「でも今回はさすがにムカついた」

「ごめん…」

「一度は来てってお願いしてよ。楓のその口から…」

「……」

「じゃなきゃ私、来ないから」

「……」


グッとリアは腕に力を入れると、そのまま俺の身体に抱き着く。

触れる頬が何故か冷たく、リアの声が微かに震える。