「最低ね…」


先に座ってたリアの隣に腰を下ろすと、第一声がそれだった。

足と腕を組み、真っ赤な唇が綺麗に描かれたように、呟かれる。

ま、そうなるわな。


長い髪をアップにし耳にはダイヤのピアスがやけに輝いている。

真っ黒のワンピースに浮かぶようにシルバーのネックレスが首元に光っていた。

誰もが見惚れるくらいの大人オーラのリアに大半の男は必ず一度は目を追う。


なんでリアは俺を選んだのだろうと、思うほど。

そこまで俺は良い男でもなんでもない。


「悪い。何度も足運ばせて」


申し訳なさそうに顔を顰めた俺に対して、リアはため息を吐きながら眉を顰めた。


「ホントそう思ってる?」

「思ってる」

「こっちより、あっちの仕事が大事だったの?」


一瞬、その言葉にピンとこなかった。

何の事?と思うも、数秒おいて、″あぁ…″と心の中で呟く。

どうやらリアには、もう一つの仕事になっているようだ。

まぁ、このリアに他と同じ様にジムのポイントやらが通用する訳がない。

言った所で、馬鹿にしてんの?と言われるに違いない。


「まー…」

「とか言っちゃってさ、女なんじゃないの?」

「まさか…」


そう呟くものの、一瞬頭の中で美咲が過った。

鼻でフッと笑った俺は取り出したタバコを咥え火を点けた。

その顔の表情を隠すかのようにタバコの煙を吐く。


「スマホの電源切るくらい忙しかったの?」

「まぁ、そう言う事」

「へぇー…、なんだか私も馬鹿にされてるわよね」


フッと笑うリアは真っ赤な唇を上げる。

表情からすると、簡単に許してもらえないことを物語っていた。