好きだとか、結婚したいだとか。

彼氏が相手してくれないだとか。


俺の事より、自分の事ばかり言う女に正直、呆れと言うよりも面倒くさい奴にしか思えなかった。

だけどその女達から距離を置こうとしなかった俺は、ただ少しでも安らぎを探していたのかも知れない。


だからこうしてホストから抜け出せないのかも知れない。

いや、多分。

ここが俺の居場所なんだろうか。。



どれくらい時間が経ったのか分からないくらいだった。

だけどそう思ってても実際は数時間なんだろう。

重たい瞼を開け、髪を無造作に掻き上げた。



作業着に着替え重い足取りで、現場に向かう。

辞めればいいものの、その理由がみつからない。


ただホストと言うブランドに包まれたくなかっただけなのかも知れない。

違うもう一人の自分がほしかっただけなのかも知れない。


「…翔さん、おはよーっす」

「…はよ」


現場に着くと3個下のタケルが眠そうに口を開き、髪を乱暴に掻き上げた。

染めすぎてる所為か、多少傷んでる髪が纏まらずにいる。

チャラけたその風貌が、昔から遊びまくってた事を物語っているようなもんだ。


「相変わらず翔さん、爽やかっすね」


伸びをし欠伸をしたタケルが顔に笑みを作って、俺を身構える。


「はぁ?どこがだよ、」

「いやー、眠くねーのかなって」

「すげぇ眠い。今日は特に眠い」

「へぇー、珍し。何かあったんすか?」

「何もねぇよ」


何もねぇけど、マジで気分がのらないのは確か。

そして眠い。

出来るなら休んでやりたかった。