次の日バイトに行くと、ケーキの焼ける匂いが漂っていた。

「おはようございます」

 制服に着替えて厨房をのぞくと、黒いコックコートの竹本さんらしい人がいた。

 ちらっと私を見て、挨拶もせず向こうを向いた。

「女がいるなんて聞いてない」

 小声だったけど聞こえた。

 悪かったわね。女嫌いなの?

「おはようございます」

 小野田先輩が来た。

「お、おはよう」

「今日からよろしくお願いします。僕は小野田と言います」

「竹本です。よろしく」

 そうだ、自己紹介してない!

「あ、すいません!私、西口と言います。よろしくお願いします」

 竹本さんはちらっと私を見たけど、何も言わず小野田先輩を見た。