カフェには黒豹と王子様がいます

「上杉ちゃんと、松山ちゃんを二人になんてしておけないわ」

 なんて言いながらも、あちこちのケーキ屋さんで熱心にメモっていた。

 
 ある日、上杉さんにとって人生を変える、衝撃の店に出会った。

「……ここのコーヒー、めちゃくちゃうまい」

「本当だ。素人の私にもわかる」

「僕さ、こんなコーヒーが入れられるようになりたい」


 次の日、竹本さんから連絡をもらって慌てて店に行ってみると、上杉さんが土下座していた。

「な、なにがあったんですか?」

「上杉ちゃん、昨日のあのコーヒーの店で働きたいって。でも、ここのケーキの味は大好きだから、この店もやめたくないって」

「そんなわがままな」

「ちょっと気持ちはわかるわね~。あの店すっごくコーヒー美味しかったものね」

 今井さんは悩んでいた。

 今井さんにとっても、上杉さんは手放したくない人なんだ。