カフェには黒豹と王子様がいます

 私は脱衣所の扉をノックした。

「……帰らなかったのか」

 中からそう聞こえた。

「帰らないよ」

「……帰ってもいいよ」

「……ううん、帰らない」

 そう言うと、扉が開き、抱きしめられた。

 濡れた髪からしずくが落ちる。

 徳永さんは私を優しく、優しく抱きしめた。

 私も徳永さんを抱きしめた。

 徳永さんは少し体を離して、私の顔を見る。

 目線が口元に行く。

 徳永さんはゆっくり私に近づく。

 徳永さんの動きが止まった。

 目を開けると、

 徳永さんは、私をじっと見つめていた。