カフェには黒豹と王子様がいます

「西口……退院したんだな。よかったな」

 俺の顔見るなよ、頼むから。

「まだ、声、出ないんだな」

 西口が少し悲しげに笑って下を向いた。

 何話したらいいんだ……。

「あ、そうだ、俺さ、フランス行くから」

 はっと俺の顔を見た。

「もう……決めたんだ」

 西口はペンを取り出し、紙ナプキンに文字を書く。

『いつ?』

 その文字をじっと見つめた。

「……来月」

「西口!」

 ほとんど同時に聞こえたその声は、店の入り口にいる徳永だった。

「ここにいたのか。家に行ってもいないから心配したよ」

 まだ徳永の顔を冷静に見れない。