カフェには黒豹と王子様がいます

 俺は、なるべく西口の視界に入らないところにいた。

 豊川が嬉しそうに、マスターにケーキをお願いする。

 マスターも、どのケーキを出そうか、うきうきしている。

 なんか、涙が出そうだ。

 懐かしそうに店を見渡す西口。

 ケーキをおいしそうに食べる西口。

 マスターに少し笑顔を見せる西口。

 少し元気そうに見せているけど、別人みたいだ。

「……小野田さん、小野田さん」

「え、ああ、なんだよ」

「西口さんが、小野田さんと話したいって」

「西口が?」

「はっきりは言わないけど、見てたらわかりますよ。行ってあげてください」

「あ、ああ」

 どんな顔して会えばいいのかわからない。