カフェには黒豹と王子様がいます

「ありがとうございます」

 マスターは、笑いながら、俺の肩を抱いた。





 そのあと西口は退院したと聞いた。

 ずっと会っていない。

 きっと徳永は毎日通っているんだろうな。

 元子さんも時々訪ねているようで、様子は知らせてくれた。

 ……声は、まだ出ないらしかった。


 しばらくフランス行きの準備とかで、ばたばたとした日々を過ごした。

 久しぶりにバイトに行くと、豊川と一緒だった。

 あれから何度かは一緒に仕事しているが、仕事のこと以外では話もしなかった。

 その時

「あれ?西口さん!来てくれたんだ!」

 という豊川の声。

 元気そうだ。

 よかった。

 ダメだ、想いがこみ上げる。